農園にいらっしゃった方の中には、ご自身で石窯を作る際の参考にしたいということで、窯を見に来る方も、ありがたいことに沢山いらっしゃいます。
石窯を作ってちょうど5年が経ちましたが、僕たちが石窯づくりから、それを使い続けてみての経験であったり、他の窯を使わせていただ体験をもとに、素人ながら少し石窯についてのことをまとめて見たいと思います。
https://dtakai.com/2020/07/14/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%83%86%e3%83%ac%e3%83%93%e7%b3%bb%e5%88%97%e3%80%8e%e3%83%92%e3%83%ab%e3%83%8a%e3%83%b3%e3%83%87%e3%82%b9%ef%bc%81%e3%80%8f%e3%81%ab%e3%81%a6%e3%82%b7%e3%83%ab%e3%82%af%e3%83%a1/
まず、石窯の作り方から窯の使い方までご指導いただきましたすどう農園代表の須藤さん、本当にありがとうございます。
何でも焼ける便利な石窯
石窯とは、耐火レンガや耐火コンクリート、場合によっては、溶岩等の岩石なんてこともあるようですが、それらでドーム型などの炉を作り、中で火をおこして、蓄積された放射熱を最大限に活用して料理するオーブンです。
石釜はピザ焼きに使われることが多いため(実際うちの窯も9割ほどはピザ焼きに使用しています)、よくピザ窯と呼ばれたりもしています。
石窯の誕生は紀元前の時代まで遡ると言われていまして、はじめはパンを焼くために作られた石窯は、長い年月を経て、様々な焼き料理に用いられるようになったそうです。
中世のころのヨーロッパでは、地域のなかに共用の窯もあったようで、様々な料理に活用できる石窯は、生活に根付いた道具として多くの場面で活躍していたことと思います。
家庭用台所が便利なものに変わっていく中、屋外での火の扱いに厳しくなっていくのもあわさり、家庭用の石窯を持つことも使うことも少くなったことと思いますが、一方で、遠赤外線を活用する石窯料理はやはり魅力的ですから、それ売りにしたピザ屋やパン屋も増えてきました。
最近はDIYの流行とともに石窯キットなども販売されているので、煙を出しても大丈夫な所では、自宅の庭に石窯を作り、ピザやパンを料理して楽しむ方も増えているようです。
大谷里山農園の石窯は、キットを使わずに作ったものですが、共通する部分も多いかと思いますので、キットを使って作ろうとしている方にも何かの参考になればと思います(^^)。
石窯づくりの流れ
基礎づくり
まず、農園の石窯を作るにあたりM&Uビルダー㈱の皆さまにお手伝いいただきました。お忙しい中最後までお手伝いいただき、本当にありがとうございます(^o^)
サイズにもよりますが、全体で重量1トンを超える石窯。一度作りましたら、長く使われることになるかと思いますが、時間とともに傾きや壊れが起きないよう、基礎や土台は特に正確に作るようにしたほうが良いので、専門の方と一緒に作れると安心です(^^)。
近くに燃えやすいものなど無く、広めにスペースが確保できる場所が良いです。窯を作るときも、調理するときも、予想外に色々な作業が必要になるので窯周辺スペースに余裕があったほうが良いですね。
場所が決まったら、まず基礎全体の大きさを決めるために四隅に杭を打ち、その中を水平をとりながら、15センチほど掘っていきます。
石などを敷き、段差がでないよう整えて慣らし、上からしっかりと踏み固め、ワイヤーメッシュを乗せ、そこにコンクリートを流す込むための型枠を組んでいきます。
出来上がった型枠にコンクリートを流し込み、表面をコテなどでキレイに整えていきます。
2〜3日程で完全に乾きますので、固まったら枠を外せば基礎の完成。一つひとつの作業を乾いたら進めて、乾いたら進めてを繰り返しますので、窯の出来上がりはまだまだ先です(・・;。
土台づくり
土台はコンクリートブロックや煉瓦で作る方が多いかと思いますが、地元の石屋さん諏訪石材さんからたくさんの大谷石をいただきました。石の提供だけでなく、石の運搬、加工、積み上げまでお手伝いいただき、本当にありがとうございます。
海外の雰囲気漂うレンガ造りよりもずっと、大谷石は里山の雰囲気に合いますし、耐火性、蓄熱性もそなえていますから、石窯の素材としても理想的です。
実際に石窯を使う時の作業は長時間になりますので、土台の高さは、あまり腰を屈めることなく作業できるくらいが良いです。
大谷石1つの厚さが15センチ。5段にして90センチくらいまでまで積もうかとも思いましたが、お子さんがた含め、どなたにも使い易いものにとの思いから、一段下げて75センチにしています。
頻繁に使用していますが、この高さで使いづらさを感じたことはありません。
石をロの字に積み上げながら、ロの字の中には砂利を敷き詰めています。ここでも傾かないように、一つひとつ水平であるかどうかを確認しながら積んでいきます。
砂利を入れるのは上5センチくらいの余裕を残して終わりにし、残りの5センチには耐火コンクリートを流し込み「焼床」を作ります。
焼床づくりで使う耐火コンクリートは、コテ塗りタイプでなく、流し込みタイプの“アサヒキャスター13s”が扱いやすいのでベストです。
ピザを焼く際にはこの焼床に、直接並べますので、凸凹やひび割れなど無いよう、コテを使って表面を丁寧に塗り整えます。
3日ほど置けば、しっかりと固まりますので、固まったら土台の完成です(^^)。
窯本体づくり
扉の準備
窯本体を作り上げていく前に、まず石窯の入り口を塞ぐための扉が必要となります。
ピザを焼くときは、中で火を焚きながら調理をするので、入り口は開けっ放しとなり、扉は必要ありません。
ですが、200度辺りで時間をかけてじっくり調理する肉料理やパンづくりをする際には、窯の中に熱を閉じ込めるために高い熱に耐えられる鋼鉄製の扉が必要になります。
農園のピザ窯の扉は、まちだテクノパークさんよりご寄贈いただき、現在もなお大切に使わせていただいてます。
作る窯のサイズに合わせて特別製造いただきましたものです。まちだテクノパーク様、㈲齋藤製作所様、貴重なものをありがとうございます。
石窯の扉は、蝶番つきで取り付けて開け閉めできるタイプと、入り口の前に置き塞ぐタイプの2つがあります。
いずれにせよ大切なのはそのサイズでして、多くの研究から、石窯の入り口のサイズは全体の高さの3分の2程度が良いという結果が出ているため、そのくらいの大きさのものを用意するようにしましょう。
扉は最初のころは特に錆びやすいので、表面にサラダ油などの油をハケなどで塗り、メンテナンスしておくと、良い輝きの扉になっていきます。
窯づくり
窯づくりは型づくりからはじめます。
石窯の壁は5センチ程度、これを2層作りますので、最低でも土台上に左右そして奥に15センチ程度の余裕ができるくらいの大きさで型を作ります。スペースに余裕があるようなら手前はもう5センチくらい多めに余裕を作っておくと何かと便利です。
型の素材には土嚢と土、また木片などを使います。土嚢や木片を積み大体の形を作り、その上に土を塗り重ねて窯内側の形をとっていきます。
土の型の上から濡らした新聞紙をかぶせることで、コンクリートが固まったあと型を抜き出しやすくします。
6センチで印をつけた竹串を、窯全体にまばらに刺していきます。塗り始めると壁の厚さが分かりにくくなりますが、こうすることで、均等に5センチの厚さの壁を作っていくことができます。
使用する耐火セメントは、コテ塗りタイプの“アサヒキャスター13T”。固めやすく窯を形づくるのに役立ちます。
石窯の壁がしっかりと固まるまでには3日ほどかかりますが、固まったら濡れた新聞紙で厚め(3〜5ミリ程確保できれば理想的です)に覆い、2層目を作り、表面をキレイに整えます。
しっかりと固まったら、型に使った土や土嚢、木片を内部から取り出せば、窯本体の完成となります。
一度窯に軽く火を入れ、窯の湿気を飛ばしながら、内部の壁についたままの新聞紙を焼いて灰にしましょう。あまり強く燃やしてしまうとひび割れの原因になってしまいます。
窯を作った後にすること
窯の表面のコンクリートは雨に濡れると劣化してしまいますし、濡れて冷えた窯に火を入れて急激に温めるのもひび割れの原因となりますので、窯を長く使うには良くありません。
窯が出来上がったら早めに屋根を取り付けることをオススメします。
薪を置くスペースの確保や雨でも作業できるスペースづくりの為、大きめに屋根を作っていますが、この大きめの屋根が本当に助かっています。天気に左右されずにピザづくりができるのはありがたいですね(^^)。
また、屋根を取り付け、丁寧に石窯を使っているつもりでも、どうしてもひび割れがおきてしまうものです。特に高温になりやすい入り口部分が割れやすいでしょうか。
こうなった場合、一度割れた部分は取り除き、再度耐火コンクリートで窯の壁を作っていくことになります。
余った耐火コンクリートも取っておいて、補修の際に使っても良いです。とはいえ、そんな頻繁に使うものでもないので、必要なときに再度購入しても良いかとも思います。
仕事上に耐火コンクリートの扱いに慣れている飯土井さんにいつも手伝っていただいています。ありがとうございます(^^)。
石窯のある暮らしを
石窯をつくるために費やした日にちは7日ほど。コンクリートを乾かしたりする時間を要するため期間としては1ヶ月ほどです。
なかなか大変な作業ではありましたが、作ってみると、本当にいろいろな使い方があることに驚かされます。
一方で、恐らく同じ料理方法を最新の調理機器で行えばかかる時間は、5分の1とか10分の1にでもなるかとも思います。
薪を用意し、火をつけて、調理が始められるくらいまで窯をあたためるには、大体2、3時間ほどです。時間に追われる生活の中では、この時間は負担でしかないかもしれません。
ですが、たまにそんなことも忘れて、じっくりとジワジワと燃える火を眺めながら、窯があたたまるのを待ち過ごす時間も、とても魅力的なものになったりもします。
そして、この時間をかけて窯に蓄えた膨大なエネルギーをどう有効活用しようかと考え、またワクワクするものです。
石窯の魅力はここでは語り尽くせませんが、このブログでは様々な石窯料理を掲載していきますし、機会があれば是非石窯料理を体験してみてください。この楽しい時間を一度実感していただければと思います(^^)。