記録

生かされている社会から“生きている”実感へ -「里山写真展」インタビュー記録より-

今年一年間、大谷里山農園で、里山の撮影をしている東京造形大学写真専攻のみなさんに、報告会のインタビューをしていただきました(^^)。僕の活動や思いをキレイにまとめていただきましたので、転載させていただきます。

活動内容と立ち上げの経緯

◆高井さんの活動について教えていただけますか?

高井さん(以下:高):はい。プラナスという団体がありまして、もとは七年前に立ちあげた団体で、その時僕は代表をやっていたんですけれど、四年前にNPO法人に事業を移行させて、別の方に理事長になって頂くことになりましたので、僕は今ここの施設長と事務局長をやっています。

◆どんな団体なんですか?

高:もともとは地域の障害を持っている子どもを預かる施設として立ち上がったんです。皆さんご存知かなとは思うんですけど、多摩境の地域ってイメージつきますかね。南大沢っていうとなんとなく分かるかな。

簡単に言うと、だいたい今から十五年、二十年くらい前からマンションが徐々に建ってきて、いまだにマンションが建って子育て世代が増えている地域なんですね。そこで何が起きるかというと、子どもの人数が増えると同時に、当然障害を持っている子どもたちも外から移り住んで来るわけです。急激に人口が増えると福祉サービスというのは、いきなり施設がバンって出来て「預かります」みたいなことは難しいんですよね。障害を持っている子たちがこの地域に来たけれど、帰る場所がないってことが結構あるんです。僕はもともと、相原の大学で職員をやっていたんですけれど、多摩境のそういった事情をよく聞くものですから、何とかしたいと思って、多摩境に住んでいるお母さん方と連携して、当時その子どもたちを預る施設を作ろうということで、その施設を今も継続して運営しています。

立ち上げた時からの課題として、僕はもともと「障害を持っている人たちの仕事をどう生み出すか」というのを研究していたんです。始めた時は子どもの施設だったんですけど、将来的にその障害を持った子どもたちが大人になって、やる仕事が不足するというか、作り出していかないと後で行き詰まってしまうと思っていて、現在はいろいろな仕事づくりを試行錯誤しているところです。

目指す仕事づくり

◆例えばどんな仕事があるんですか?

高:僕が作り出す仕事としては大きく分けて三つあって、一つ目は、「障害を持っている方でも自由に選べる仕事」ということ。二つ目は、「本人たちがやりがいを持って取り組める」ということ。三つ目は「地域に根付いた仕事」ということ。本人たちは当然地域で暮らしているわけですから、地域と切り離されていては意味がないわけで、地域の一員として生活できるようになるために、その三つを柱としてやってきていています。

◆地域で行っている活動は何かありますか?

高:今では町田の特産になった「まちだシルクメロン」というメロンに関連する商品をいくつか企画しています。

“生きている”を実感できる活動をともにつくる

◆大谷さんとはどうやって知り合ったんですか?

高:大谷里山農園さんとは四年前に出会ったんですね。いざ障害を持っている子どもたちが卒業して大人の施設を作ろうとなった時に、地域の中で場所を貸してくれる方がいなかったんです。普段から障害を持っている方が地域に出ていけるようにと活動を支援してくださっている方の中で、ここを紹介してくださる方がいたんです。ここは障害を持った方が活躍する場としても良い場所だし、交流する場としても、すごく価値がある場所だと感じました。

◆ここでやってみたいことってありますか?

高:個人的に取り組みたい課題として、ここでは自分たちの生活をもっと深く考えたいっていう思いがあります。まあ自分たちの生活って、例えば今はお金さえ出せれば何でもものが手に入るじゃないですか。でもそれって生きている実感があまり感じられないというか、自動的に物が流れ込んでくるみたいな感じがしないですか。

作物を作っている人たちと直接やりとりがあって、はじめて生きている感覚だとか生活している感覚って感じられると思うんです。いまはそこが分断されているせいで、生きているというかは「生かされている社会」そんな感じがしてしまうんです。もう少し「生産」と「消費」の距離を近づけることによって、生きている実感っていうのをいろんな人が感じられるとより良い世の中になるんじゃないかな、という思いがあります。障害を持っている方と自分たちの生活って、一見離れた問題に見えるけれども、そうではなくて、障害を持っているとか持っていないとか関係なく、自分たちでものを生み出して自分たちで消費できて、っていうのがある程度コンパクトに出来ると、障害があるから生活に困るだとかそんなことってあまり起きてこないんじゃないかなと思うんです。障害を持っている方とお互いに、新しいライフスタイルを生み出せたらと思って、いま大谷さんとかと一緒に活動している状態です。

◆例えばどんな活動ですか?

高:お米作ったりとか、醤油作ったりとか。美味しいものが食べられて、居場所があって、それって誰でも楽しいと思うので、そこを僕らが整備してあげることかなと思っています。大谷さんとは今かなり近い距離で、お互いにいろいろなことにチャレンジさせていただいています。ここではたくさん人を巻き込んでいろいろな活動ができると思うので、そんな思いを持って活動しています。組織作りもやっていることも試行錯誤中だし、もしかしたら一年後は違うことやっているかもしれないですけどね。

 

以上。東京造形大学の学生の皆様、一年間ありがとうございました(^^)。

なお、写真専攻のみなさんによる里山写真展の概要はこちら

東京造形大学里山写真展の様子(農園全景写真)

 

ABOUT ME
高井 大輔
横浜市出身、東京都町田市在住。 学生時代に“大学ボランティアセンター”づくりを目指し活動し、卒業後そのままセンターの職員に。大学周辺に福祉施設が不足していることを知り、大学を退職。障害福祉を扱う会社とNPOを設立。現在、施設運営を行いながら、「自ら生きる」をテーマとした生活づくりを実践中。